『「進撃の巨人」と解剖学 その筋肉はいかに描かれたか』
進撃の巨人、ついに完結!!
諫山創先生による「進撃の巨人」の最終話が2021年4月9日発売の別冊少年マガジン5月号に掲載されることとなり、ついに11年半にわたる連載に終止符を打とうとしています。
連載が始まったのは2009年。私がちょうど小学生になったばかりの頃でしょうか。
人気が高まってきた中~高学年になる頃には、男子が「駆逐してやる!!!!!」と叫ぶ声が至る所から聞こえてきた時期がありました(笑)
NHKでのアニメ放送も最終章を迎え、アニメを追っている私には今後の展開がどうなっていくのかとても気になるところです。
「進撃の巨人」×美術解剖学
今回読んだ、『「進撃の巨人」と解剖学 その筋肉はいかに描かれたか』は、巨人の身体やその魅力を美術解剖学の視点から眺めた、美術批評家であり解剖学者でもある布施英利さんによる一冊です。
「人間の皮膚の下はああなっているのか、、、」
「いや、そもそもあの描写は正しいのか、、、?」
「あの顔のひもっぽい何かとか、手首のリストバンドっぽい何かは一体、、、」
皆様も超大型巨人をはじめとする巨人の肉体を初めて見たときにこのような疑問を抱かれたのではないでしょうか。
その答えがこの一冊に詰まっています。
この本の初版が発行されたのは2014年11月。
この時点で「進撃の巨人」の単行本は14巻まで発売されており、物語はクリスタの出自をめぐるお話が始まった段階でしょうか。
(漫画よりアニメをメインに履修しているので、事実と異なる記述があったらすみません。)
この時点までに登場する、
鎧の巨人
超大型巨人(ベルノルトの巨人)
女型の巨人
顎の巨人(ユミルの巨人)
獣の巨人
そして無垢の巨人の肉体構造とその魅力についてが記されています。
挿絵が多く読みやすいこともさながら、解剖の実体験をもとに述べられた記述が多くあるので、興味深く最後まで読み進められました。
抜き出す場所がピンポイントですが、、
布施さん曰く、「肺の弾力を知ってしまえば乳房などなんと単純なものかとわかる」くらい肺の弾力は魅力的なのだそうです。
乳房より魅力的な肺の感触とはこれいかに、、、
…私の中の中学生男子が疼きます。
また、女型の巨人の縫工筋(太もものあたりにある筋肉)を下着のガードルのようで、エロティックな雰囲気を放っているなどと表現されているあたり、私の中の中学生男子は疼いてばかりでした。
勿論、中学生男子を疼かせるような記述ばかりでなく、鎧の巨人の鎧を構成しているものは何なのか、超大型巨人を超大型たらしめるための古くから使われる表現法など、純粋にわくわくできるような記述も数多くありました。
また、布施さんが考える無垢の巨人の正体も大変面白く感じました。
美術解剖学
私も落書きをする程度には絵を描いて楽しむ人間です。
絵を描く際におおまかにでも人体の構造を知っていると知っていないでは完成形が全くもって違ってきます。
ちなみに私は人体の構造を理解できず、いつまでたっても絵が下手なままです(泣)
この本は人体の構造について素人にもわかるように説明がされているため、今後絵を描く際に参考になる一冊でもあると思います。、、というか参考にします。
また勿論、人体の構造など理解せずとも上手な絵が描ける神絵師さんは大勢いらっしゃると思います。
しかし、特に「進撃の巨人」のような服を纏わぬ肉体や筋肉をリアルに描写する必要のある作品にとって、美術解剖学という学問は切っても切り離せない関係にあるのではないでしょうか。
この本には、そんな美術解剖学の専門的なお話も載っています。
特に驚いたのが、日本で最初の美術解剖学の授業を担当したといわれるのが、あの森鷗外(林太郎)だそうで、、、
鷗外といえば「舞姫」でおなじみの、あのドイツに恋人を置き去りにして帰ってきた、あの、彼です(語弊はあるかもしれませんが、、)
自然主義が全盛期を迎える中、それに同調することなく反自然主義に属し、独自の道を突き進んだという鷗外は、のちの耽美派に影響を与えた人物でもあり、文豪として世にその名を広く知られています。
そんな彼が陸軍軍医であり、ドイツに留学し、衛生学だけでなく、文学・哲学・美学にも関心を寄せていたことは作家としての側面に埋もれがちなのでしょうか。
私は、鷗外が軍医だったことは知っていましたが、美術とも関連が深い人物であるということは知りませんでした、、
美術解剖学の教科書の作製も行っていたというので、作家に公職に、非常に多忙な人物だったのだと改めて驚きました。
当時未登場だった巨人たち
先にも書きましたが、この本が発行されたのは2014年11月。
そのため、当時未登場の巨人も何体か存在します。
九つの巨人のうち、完全4足歩行である車力の巨人。
ユミルの巨人とはまた違ったビジュアルを持つガリア―ドの顎の巨人。
そして弱点が他の巨人とは大きく異なる戦槌の巨人を今の布施さんはどう読み解くのか、大変気になります。
それでは近く完結する「進撃の巨人」の結末に想いを馳せて。
今日はこの辺で。